西郷隆盛は温泉好きでも知られている。栗野岳温泉に鰻温泉、吹上温泉など、ゆかりの温泉には現在に至るまで逸話が伝わり、ゆかりの品々が残されている。
なかでも特に滞在回数が多いのが日当山温泉である。
慶応2(1866)年、坂本龍馬が霧島へ新婚旅行に出かけた際にも、西郷は同行はしなかったものの、近くの日当山温泉で湯治をしていた。温泉入浴に限らず、うさぎ狩りや釣りなどをして、それこそのんびりしていたようだが、現在あるような温泉宿への滞在ではなく、龍宝家という日当山では名家の屋敷に滞在していたようである。
その屋敷は現在場所を移し、温泉街のはずれに復元されている。屋根は茅葺で、復元といえども西郷が滞在当時を充分彷彿させてくれる。
日当山温泉における西郷の逸話としては、公衆浴場において入浴する際の定位置は、湯口ではなく排出口の近くだったとか、同行してきた付き人に相撲をとらせていたとか、自分のワラジは自分で編んでいたといった穏やかな時間の過ごし方を伝えるものばかりだ。
日当山温泉は、西郷ゆかりのエピソードがあるだけでなく、泉質の良さや家族湯の充実といった特徴で、現在でも人気の温泉郷でもある。
復元された屋敷周辺を散策して、なつかしさも感じながらほっとするもよし、西郷が釣りをしていたといわれる天降川沿いでのんびりするもよし、温泉入浴以外の楽しみ方も豊富な日当山温泉郷で、西郷さんのようにゆっくり過ごされてはいかがだろうか。