九州最高峰の宮之浦岳を有する南海の島・屋久島。
その姿は「洋上アルプス」とも称され、世界中の人々を魅了する。
屋久島といえば、世界自然遺産にも登録されている山間部に広がる雄大な森林の印象が強いが、離島であるので当たり前であるが周囲を海が囲う。それだけに海岸線にも屋久島ならではの景観が広がっている。
まず、屋久島の成り立ちについて簡単に紹介したい。
屋久島の基盤となる「日向層群」は海洋プレートの沈み込みによって、その上の堆積物が陸側に押し付けられたり、付け加えられたりした「付加体」と呼ばれるものから成る。
それらは西日本一帯で確認され「四万十層群」と呼ばれているが、屋久島や種子島の海岸線で顕著に観察できる堆積岩は、その一部にあたる「日向層群」と称されている。それらが堆積したのは約4000万年前とされ、砂岩と泥岩が様々な姿で屋久島の海岸に現れている。
そこに約1600万年前から地下よりマグマ溜りが貫入を始め、日向層群を押し上げて島が形成された。
このマグマがゆっくりと冷却されたのが「花崗岩」であり、現在の屋久島の山々の大部分を形成している。その際にマグマから分離した水分が熱水となり日向層群の割れ目に網の目のように充填する。そこに石英が沈殿して、さらに様々な鉱物も含まれる。そのひとつが貴重なタングステンである。
そのタングステンの鉱山が長峰区の早崎であり、大正から昭和前半にかけて採掘が行われていた。
早崎の海岸には、その採掘のために開けられた坑口などが残っている。
その姿は、まさに断崖。ただ、かつての鉱山であっただけに人々の行き来ができないわけではなく、気をつければ日向層群の上面にも立てる。こうした堆積岩の上に立つと、海はもちろん遠くに平たい種子島を望むこともでき、時を忘れて見とれてしまう。
鉱山跡という異質な空間でありながら、屋久島らしくもある海の眺望スポットである。