2021年11月 湯湾岳(奄美岳)(大島郡宇検村・大和村)

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今年7月、奄美大島や徳之島が沖縄島北部や西表島とともに世界自然遺産に登録された。

これで鹿児島県内は、自然遺産としての屋久島、文化遺産としての明治日本の産業革命遺産の旧集成館等を合わせて三つの世界遺産を有する県となった。

世界遺産は、振興や普及啓発も大切だが、やはり次世代への継承を目的とした保護が求められる。

それだけに、世界的価値として認められた自然と丁寧に接していけたらと考える。

人口の多い奄美大島において、世界自然遺産としての保護地域は特に島の南西部に集中する。

その中心に位置するのは奄美大島の最高峰である湯湾岳こと奄美岳である。標高や694メートルで、宇検村と大和村の境に位置し、両側から登山することが可能である。

古より、聖なる山として信仰の対象でもあり、山頂近くにはシネリキョとアマミコの島建神の二神を祀る祠もある。

最高峰ゆえに島周辺を行き来する船の目印にもなっていたようで、江戸期には琉球王国の使節が登山し、航海安全祈願を行った記録もある。

古い奄美歌謡では今里(現在の大和村)の祝女オモリに「ゆわんたけに かけんしょたん 高神様」と謡われており、島の人々の湯湾岳への畏敬の念がうかがわれるし、こうした信仰の場であったことも世界自然遺産としての価値を有するほどの環境が守られてきたことに繋がったともいえよう。

湯湾岳周辺には亜熱帯広葉樹林の原生林の覆われており、貴重な動植物が生息している。

植物ではコゴメキノエランやユワンツチトリモチ、ウケユリ等の希少種が確認されている。

動物はアマミノクロウサギやルリカケス、アカヒゲなどの大島を代表する動物が住処としている。

もちろん、猛毒で恐れられているハブも生息しているが、みだりに人間が入り開発することを抑止する役割を担っているともいえよう。

ちなみに写真は赤土山展望所から眺めた湯湾岳で、一番後方に高く稜線を拡げた山がそれである。大和村側だと初心者でも登れる山なので、保護ルールも遵守しながら、ぜひ貴重な自然に触れてほしい。