太平洋に面した大隅半島。
特に肝付町から南大隅町の海岸線沿いには、訪れる人々を魅了する美しい砂浜が点在している。
それらの砂浜の最大の特徴はその砂の白さにある。
快晴の日に訪れると特に砂浜の白さはまぶしく、空の青との色のコントラストがまさに絶景である。
そのような砂浜のひとつに辺塚海岸がある。
ところで辺塚という地名は、太平洋に面した海岸線沿いにふたつ存在する。今回ご紹介するのは肝付町の辺塚である。南大隅町にも辺塚があり、集落の人口規模は南大隅町の辺塚の方が多い。
肝付町の辺塚は大字では岸良といい、商店や町役場の出張所のある岸良集落までは車で20分ほどかかる。
つまり、集落人口はもちろん、人家の密集する地域からも離れた場にあることから、人工物はもちろん自然を満喫するのに障害となる要素が皆無な地域にある海岸といえ、それだけに美しさは際立っている。
白い砂浜の砂の正体は、花崗岩が主であり、それらは砂浜を流れる一ノ谷川によって山間部から運ばれてくる。
辺塚集落の背後には、標高744メートルの四坂岳や標高754メートルの六郎館岳がそびえているが、それら花崗岩の貫入によって形成された山の存在が、砂浜の白さの起源となっている。
近年「辺塚」の名前は全国区となった。
それは「辺塚だいだい」という名の柑橘類が、全国販売の缶酎ハイに使用されたからだ。
「辺塚だいだい」は前述した南大隅町の辺塚と岸良の辺塚を中心にして、この二町のみで生産される柑橘類で、他地域への持ち出しは禁止されている。果皮が薄くて果汁が多く、ライムに似た独特の香りを有することから酎ハイには適した柑橘類といえる。収穫は8月から10月頃。岸良の辺塚では「辺塚デデス」とも呼ばれ、果汁の酸っぱさから酢の代用品としても利用されてきた。
人里離れた地域だけに、まだまだ鹿児島県内でも知る人ぞ知る海岸。
地域で収穫される柑橘類が全国区に成長しただけに、徐々にこの海岸の美しさを大切にしながら触れる方々が増えて欲しいと思っている。