林のなかの遊歩道を進むと、突然眼前に現れる迫力が心にくい演出にも思える塚崎の大クス。
樹齢は約1300年とされ、目通り幹廻りは約14メートル、樹高は約25メートルの姿は、まさしく大クスである。
この大クスの最大の特徴は塚崎古墳の1号墳から成長していることであり、巨樹と古墳が一体化しているという光景は珍しいとされている。そのため地域では神木として信仰され、これまで古墳とともに大切に保存されてきた。
さて塚崎古墳群は、標高約20メートルの台地に古墳が点在し、前方後円墳が5基、円墳が54基、地下式横穴墓が29基確認されている。
それらの築造は、古墳時代中期から後期と考えられ、今から約1500年前のことである。
また、昭和20年には国指定史跡になっており、大隅半島を代表する古墳史跡でもある。
そして塚崎古墳群の特徴は、日本最南端の前方後円墳を有することで、塚崎51号墳がそれにあたる。
畿内を中心とした古墳文化の最南端かつ最前線がこの地であったことが理解できる。さらに大隅半島のなかでも志布志湾岸沿いには、他にも唐仁古墳群や横瀬古墳、神領古墳群などがあるが、それらのなかで一番古い時期に築造されたのではと研究でも指摘されている。
塚崎11号前方後円墳は、そのなかでも最古とされていて、真上から見ると手鏡のような形状をしている。また墳丘の周辺には石が確認されていて、これらは古墳に置かれた「葺石」とされている。
また29号地下式横穴墓からは、ほぼ完全な形の人骨と鉄の矢じり、小刀も発掘されている。その人骨には赤の着色も見られることから死後にまじないのようなものが施されたのではないかと考えられている。
このように大クスのある塚崎1号墳を起点にして、それぞれ特徴のある古墳群を周遊することもできるし、そのための案内看板も充実している。また古墳群のある台地上には歴史民俗資料館もあり、それら古墳群の魅力を出土品に触れながら深掘りすることもできる。
大クスで木の有する生命力に触れながら、大隅半島独特の古墳文化に触れてみてはいかがだろうか。