市役所前電停を降り、鶴丸城跡を通り遊歩道をゆるやかに上り続けると、標高107mの城山展望台にたどり着く。
鹿児島市街地から錦江湾をはさんで桜島を見渡せ、好天時には開聞岳や霧島連山の山稜も確認できる。
南北朝時代に山城が築かれたことから、ドン広場(土塁)や空堀が往時の面影をとどめている。
近世に入ると、鶴丸城の背後を守る天然の要塞として一般の立ち入りが禁止された。このことが、樹齢400年を超えるクスノキ、国内で初めてこの地で確認されたシロヤマシダ、サツマイナモリをはじめとする豊かな植物相を後世に伝える結果になった。
1930(昭和5)年、在郷軍人会が城山に車道整備の工事を始めた。これに対し、西郷軍終焉の地に手を加えることへの反発や自然保護の面から、市民による反対運動がにわかに高まる。
翌年、事態打開の策として車道はやめて遊歩道とし、文化庁が城山全体を国の史跡及び天然記念物に指定することで事態は収束に向かった。
展望台は、1907(明治40)年に当時皇太子だった大正天皇の来鹿時に開設されたのが始まりとされる。鹿児島を代表する景勝地であり、観光客や市民の憩いの空間となっている。