2018年11月 寝西郷(薩摩川内市入来町)

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大河ドラマ「西郷どん」が放映され、地域では様々な動きが生まれた。

商品開発や観光地の整備、史料の発見など、鹿児島のヒーローである西郷隆盛の魅力を新たに認識させてくれるきっかけが増えることは、今後の歴史認識にとっても歓迎すべきことであるといえる。

そのような中、風景のなかに西郷さんを見出した地域がある。それが入来麓武家屋敷群である。

入来麓武家屋敷群は、西郷さん関連の史跡というより、中世から地域を支配した入来院氏の拠点、そして玉石垣の美しさで有名である。この地域から方角としては東に位置するのが藺牟田池の外輪山で、この山並みが西郷さんが寝ているように見えるというので話題になっている。

しかも外輪山は他の場所からも眺めることができるが、西郷さんが寝ているように見えるのは入来麓武家屋敷群からのみである。最近までは西郷さんというより、巨人が寝ているとして認識されていたようだが、ドラマを見ている影響なのか西郷さんに見えるようになったようである。

実際、西郷さんだと言われたら他のものには見えなくなるのも面白い。入来麓でも特に入来小学校の階段からが一番よく見えるようで、西郷さんと言い出したのも児童の発言がきっかけらしい。

では肝心の西郷さんが入来に来たことがあるかといえば、確実な一次史料はない。ただ、これも西郷さんブームのひとつなのかもしれないが、最近、入来の民家から西郷の書が発見された。また入来郷土館には、西郷さんが金庫として使用したとされている鞄も展示されている。

逸話では、入来に狩猟を目的として来訪したとされていて、特に入来峠付近の八重山周辺が狩猟地であったようだ。その際には、地元の民家に宿泊することもあったようで、その際には家の母屋などには泊まろうとはせず、家の傍らにある炭焼き小屋に寝ていたとの証言もあり、気さくな西郷さんの一面を見るようでもある。

時代を超えて様々な愛され方をしていることを改めて認識させてくれる「寝西郷」である。