2014年1月 湧水町魚野から眺める加久藤カルデラ(湧水町魚野)

201401

今から約34万年前、現在の鹿児島県と宮崎県の県境付近において、大量の火砕流を発生させる噴火が発生した。地中から噴出した火砕流によって南九州は覆い尽され、さらに大量のガスも噴出し、地上は陥没して「カルデラ」地形が誕生した。加久藤カルデラである。鹿児島県内には、このカルデラを含め、南へ姶良カルデラ、阿多カルデラ、鬼界カルデラと巨大なカルデラが並んでいる。

どの大規模噴火でも大量の火砕流が発生したが、加久藤カルデラの火砕流に起因する溶結凝灰岩ほど鹿児島の文化に大きな影響を与えたものはないのではなかろうか。例えば、江戸時代後期に建造された西田橋の石材も加久藤カルデラに由来する。受験や商売にご利益があるといわれる名突観音(梅ヶ渕観音)も同じであり、東洋のナイアガラと称される曽木の滝もそうだ。世界文化遺産候補の尚古集成館の石材も加久藤カルデラの噴出物、となるとまさに鹿児島の石文化の基本ともいえそうだ。

その加久藤カルデラの地形を十分に楽しむことができる場所が、湧水町魚野である。もちろんカルデラに限らず、霧島連山も望めるし、絶景とはこのことだ!と思わず声に出したくなるような風景だ。

カルデラ形成後に栗野岳が誕生し、霧島の山々が次々に噴火とともに成長していった。大正期より本格的に温泉掘削の始まったえびの市の京町温泉などの街並みも望め、いつまでもぼうっとしていたい場所のひとつといえるだろう。ただ、天候に左右される景色でもあるので、見通しの悪いときは想像力を働かせていただきたい。